子どもの目に映っているものは何?

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1月26日(日)、埼玉県川口市のかわぐち市民パートナーステーションの川口キュポラM4階にて、「第27回さいたま・協同して子育てを進める交流会」主催の「子どもが立ち止まるとき」~「不登校」の理解を深める~ というタイトルの例年恒例の集会を開いた。ここは週に一度「川口自主夜間中学」を開いている場所でもある。
昨年は野暮用で参加できなかったが、今年もまた、さいたま教育文化研究所からの封書の案内もあり、時間の都合をつけて参加した。その、ささやかな報告である。(以前は教育雑誌『ニコラ』でこういう話題を報じたものだが今はない)

▼お話し(講師)は埼玉大学教授:馬場久志氏。氏に関しては、今まで2度、官民連携の「不登校セミナー」でも講演をお願いしており、その立ち位置もおおよそ了解済みだ。また、自身の二人の息子さんも不登校経験者であるとか。だから、単なる口だけの机上の空論とは異なる。「子育て協同」や「親の連絡会」が講師に呼んだのもたぶんその辺のことを心得てのことだろう。
一言で言えば、教育行政いっぽんやりではなく(教育学者という立場上完全に脱却するのは不可能だろうが)、かなり子どもや親の立場に近い立ち位置で語る印象がある。言葉遣いも極めて平易で、煙に巻くことはまずない。

▼そこで引用されたデータを、既知の人もいるだろうが、改めて紹介する。

◆不登校児童生徒数(2,019年10月報告)2018年度          人
小学校            44,841 (長期欠席全体    84,033人)
中学校            119,687 (同上         156,006人)
 合 計     164,52人

○全児童生徒に占める不登校児童生徒数の割合
  ・小学校 0.70%(前年度0.54%、前々年度0.47%)
  ・中学校 3.65%(前年度3.25%、前々年度3.01%)
   ※小学校での不登校はこの5年間で約2倍に増えている 
  ・高等学校            52,723
  ・特別支援学校小学部          145
  ・同     中学校          318
   ※特別支援学校は学校基準調査による

◆2018年度学年別人数    (2019年10月報告)
    小学1年    2,296        中学1年    31,046

      2年    3,625          2年    43,428
 
  3年    5,496          3年    45,213
      4年    8,089
      5年  11,274

      6年   14,061
      ※小学生計    44,841        中学生計    119,687

 高等学校    52,723
    特別支援学校        小学部    145    中学部    318
             ※特別支援学校高等部は統計をとっていない

※データは割愛するが(データの統計があまり信用できない)、不登校の他に病欠や経済的理由等を加えると、小中学校長期欠席者(人)数は24万人を越える。

▼氏の話は、一つのテーマに沿ったものというよりは参加者のレベルに合わせたもので、不登校の現状と初心者の悩みに応えるものが中心だったので、深く掘り下げた話は少なかった。そこでここではそのうちの一つだけを、メモとして紹介したい。
この頃、教育行政の不登校に関する文章には「一人一人の~」という文言が実に多い。つまり「一人一人の課題や立場に寄り添いつつ支援することの重要性」が改めて認識されている。教育支援センターの通級指導教室も必ずしも成功していない(つまり、完全に失敗している)、民間の活動との協力が見直されている。教育機会確保法、学校復帰の見直しもその流れにある。
ところが、教室や教員の間でも「公平さ」が誤解されている。「一人だけ特別扱いはできません」という訳だ。もっとらしい言い方だ。だが「公平さ」とはみな平均値に合わせることなのか?本当の公平さとは「一人一人の課題に応じること」なのではないか?そこで「大人たちこそ立ち止まらねば」と、論題の「子どもが立ち止まるとき」に繋がるわけだ。

▼改めて、今回の集会が教員を含めた親の会の意向を踏まえたものだと知る。これは、第2部の分科会で出た話題で一層明らかになる。
進行はそれぞれ「親の会」の責任者の司会で行われた。「不登校を行政は“問題行動”ととらえているが、それでいいのか?」「子どものそばにいる大人が問われているが、親もまた余裕がない」「悩んでいるのは自分だけじゃない、ここには話し合える仲間がいる」「まず親が楽にならなければ子どもも自由に動けない」…

蛇足で一言。不登校にお定まりの回答はないのはいつものことだが、今回は特に不登校ビジネスの参加者の存在が気になった。自分のところに来れば「正解が得られる」「迷わず立ち直ることができる」かのような口吻に自分には思えた。甘言には気を付けたい。

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